Yaoyu (ヤオユ)

神田の錦町、引き継がれる雅(みやび)

新御茶ノ水と大手町に挟まれ皇居からも程近いこのエリア、江戸時代には武家屋敷が並んでいたというが、今ではオフィスビルが立ち並ぶ。コンビニも何もなかった昭和の中〜後期、トラックでこの界隈をまわっていた八百屋があった。その名は『八百勇』、鳥海智史シェフのお父様だ。

「この辺り、昔は地主さん達がいっぱい住んでいて、野菜や果物をよく買ってくれていたんですよ」
フランスから帰国した鳥海シェフが、八百屋じゃないけど、その屋号を受け継ぎたいと、店の名前となった。軒先には、『Yaoyu』と看板が出ているが、建物の入口を入り、店内へと向かう途中に『八百勇』と書かれたオブジェのような表札を目にする。

パリで活躍していたシェフとソムリエールが創り出す、異空間へ。

吸い込まれるようなアンダーグラウンドへの階段。

厨房をのぞむ特等席

凛とした空気を纏った店内のカウンターで、グラス一杯の至福を注いでいただく。
ブランドブロスのリースリング ピュア、気品があって繊細でエレガント、そしてその名の通りピュア。

生産者/ダニエル&ヨナス・ブランド/ Brand Bros
Germany ドイツ:Rheinland- Pfalz ラインラント プファルツ

「ワインのセレクトは、シェフの繊細なお料理に合わせて、
譲れないものを大切に選ぶ」

シェフは伝統的なブルゴーニュと料理を合わせるお店で働いていたこともあり、もともと自然派ワインを好んでいたのは幸子さんだったと言う。やがて、幸子さんもパリで仕事をするようになり、幸子さんが勤務していたヴァンナチュールを扱っていたお店で買ってきたワインを、休日にふたりで飲み、いつまでも飲み続けられるような美味しさに衝撃を受け、それから、次第にシェフも自然な作りのワインを好むようになったという。

旬を追い、鮮度を極める。 白アスパラは、焼く直前に皮を剥く

ドイツの白アスパラ
菊芋のピューレ
活け〆の渡蟹
パルメジャーノレッジャーノのペースト

「ホワイトアスパラは、5月になるとフランスよりドイツの方が美味い」旬が北にあがっていくのを追いかけて食材を選定する。プレートに一筆書きのように描かれた艶のある黒い一筋、尋ねると鶏の手羽でとった出汁とフォンドボーを合わせたお肉のソースだと教えてくれた。

チーズとアスパラも合うし、蟹とチーズも合うけど、蟹と菊芋も合うし、明日葉も菊芋の甘味とアスパラの苦味で楽しめる。そこにさりげなく風味とコクを演出するソースである。

「メインの旬の食材があり、彩る野菜があり、そこで感じて組み立てる」

「季節のものを追いかけて、その季節のものに旬のものを合わせて、何を合わせてどういうふうにすれば美味しくなるか、素材感を殺さないように。何よりも美味しく」鳥海シェフの料理には、型にはまったセオリーやマニュアルが無く、自由で変化が散りばめられ、立体的である。味わいも食感も、美味しいサプライズに満ちている。

週間熟成させ神経締めした青森のスズキ
ゆり根、うすい豆、サヤ大根、そして、トマトと温野菜と魚のアラでじっくり煮出したお魚のスープは、サフランとペルノというアニス系のお酒で香りが付けられており、味わい深い。スズキに寄り添うルッコラのお花や、春菊の新芽、この時期にしかお目にかかることのできないグリーンのサヤ大根など、可愛らしいあしらいが、丁度、5 月の新緑を思わせる。

コースで、デザートまで楽しむのもよし

アラカルトの料理は2人分の表示である。おひとりで来店の場合は半分にしてくれる。その日の美味しいワインとアラカルトを1〜2品、しっとりとカウンターで過ごすひと時も、間違えなく格別である。

アラカルトを選んでボトルを分かち合うのも、またよし

Les Jardin de Theseiis/Sauvignon Blanc 
レ・ジャルダン・ド・テゼィのソーヴィ二オンブラン

綺麗なSB。SBのダイレクトな美味しさと綺麗な酸味、旨味があり、流行に惑わされることないスタイルで滋味深い。少し、日本酒っぽさも感じるので、実は、抜栓の翌日もむしろ美味しかったりするそうだ。トゥーレーンのテゼで、ビオディナミの先駆者、ブルーヌアリオンがやっていた畑を引き継ぎ、前の生産者の良さを残しつつ独自の良いワインを作っている生産者。

UMAMI 2017 MILAN NESTAREC 
ウマミ / ミラン・ネスタレッツ

チェコ、南モラヴィア地方のオレンジワイン。ストイックでかっこいい。その名の通り、うま味感がたっぶり。手摘みで収穫、除梗後、50%は8日間スキンコンタクト。残りは直接プレス。アッサンブラージュしてアカシア樽で32ヶ月熟成。

Coteaux Champenois Rouge “Les Crayeres” 2014
コトー シャンプノワ ルージュ “レ クレイエール”

ピノノワールとピノムニエのブレンド淡く繊細な優しいエキス感の赤。2014年という涼しい年のヴィンテージということもあり繊細さと自然体の優しさや調和を感じるワイン。幸子さんがシャンパーニュで一番好きな生産者で、シャンパーニュで自然派をより追求し、素晴らしいスティルワインを作っている。

「まずは、実際に自分で感じたものを」
「ワインのセレクトに、大切なのは気分」

シェフ 鳥海智史 
若かりし頃、「フランス料理をやるからには、フランスで料理長を」という目標を抱き、20代で学生ビザと片道切符を手に単身でフランスへ。 パリからコルシカ島へ、そしてブルゴーニュのお店に住み込みで働き腕を磨いた。 再びパリに戻り勤務した80席ほどのお店では、メニューを任されるようになり、好評を得て、最終的には5年ほど調理長を任される。 8年間のフランス滞在を経て、2017年8月に幼い時から生活圏であり、馴染みの深い神田錦町に『Yaoyu』をオープン。後にミシュラン1つ星も獲得。

ソムリエール 鳥海幸子
シェフが渡仏して4年後にパリへ。ソムリエとして従事し、信念を曲げずに自然な作りのワインを追求。帰国後、これまで東京とパリで培ったセンスと、グランヴァン、オーセンティックなワインなど、多角的に学んできた経験、そして何よりも、独自の哲学シェフの繊細な料理に寄り添うワインをセレクトする。最近は、温暖化の影響もあるという現状を目のあたりにして、チェコ、ドイツ、オーストリアとか、フランスよりも北のエリアのワインの生産者にも着目されているという。

「テーブルクロスをひいている店でもないので、本当はパリのお店のように、がやがやと会話が飛び交い、お皿やカトラリーがカチャカチャしているような雰囲気がいいけど、皆様、ここに来ると割としっとりと静かにお食事をされる…」 パリの記憶を辿りながら、笑顔で語るおふたり。

地下とは思えない、森林を感じる開放感

凛として洗練された空気が漂う店内に、一際目立つ存在の無垢板のカウンターとテーブル。シェフ自ら材木屋に足を運び、加工前の乾かしただけという4mの長さの立派な一枚板、美しい風合いのカウンターとテーブルに作り上げたという。カウンターには槇の木が使われている。

テーブルは美しいボセの木の一枚板

真四角の広い空間で、天井が高く、不思議と光が差し込む光景を目にして、何かを感じてこの物件を決めたという。 ストイックな空間に、光や森林が宿る。まさに唯一無二の美食体験である。 インスピレーションを求め、遠方からも、足を運ぶファンが多いのも頷ける。

Interview / photo / text
山脇 ミチル|Michiru Yamawaki

Yaoyu (ヤオユ)

住所  :東京都千代田区神田錦町1-17-5 B1F
電話番号:03-5577-6783
営業時間:18:00~24:00 (22時L.O) 日曜営業
定休日 :不定休
Site   :web site
SNS  :Facebook   Instagram                   

※お店の情報は取材を行った(2022年5月)時点のものです。
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