ラ・バンカル

≪詳細・歴史:不安定な始まり(Bancale)が示す情熱≫

フランス・ルーション地方、ピレネー山脈の麓、サンポール・ド・フヌイエ(Saint-Paul-de-Fenouillet)に居を構えるラ・バンカルは、2014年にバスチャン・バイエ(Bastien Baillet)氏とパートナーのセリーヌ・シュエル(Céline Schuers)氏によって設立されました。

「自分たち自身のワインを造りたい」という強烈な情熱から始まった彼らのワイナリーは、まさにその名前が示す通り、「不安定な(Bancle/Bancale)」状態からのスタートでした。当初は他のワイナリーで働きながら、自宅のガレージで醸造を始めます。最初の畑は、ヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)であるにもかかわらずやや放置された状態で、急峻で不安定(Bancle)な斜面にありました。ポンプもトラクターもなく、収穫は家族と友人のみで行う、文字通り「バンカル」な船出でした。

2016年にサンポール・ド・フヌイエへ移転し、畑を拡大。現在では合計約6haのブドウ畑と少量のオリーブ畑を手掛けています。2020年にようやく簡素ながらも「本当のカーヴ」を持つまで、極めてシンプルな設備でワインを造り続けてきました。

≪哲学:泥まみれの服と、驚くほど深い畑への考察≫

「ラ・バンカル」の核は、醸造家であるバスチャン氏とセリーヌ氏のブドウ畑への飽くなき愛です。

「営業やサロンは苦手なんだ。畑が一番だな」と語るバスチャン氏の姿は、泥だらけの服と、あまり社交的ではない雰囲気と相まって、純粋なペイザン(農夫)そのものです。しかし、その素朴な印象の裏には、この地方の複雑な地質学や土壌に関する驚くほど深い知識と考察があります。彼らは、アグリー谷(Agly Valley)の荒々しい景観、乾燥した気候、貧しい岩石質の土壌といった厳しいテロワールを最大限に活かすため、ビオロジック(有機農法)で畑と土壌の生命力を高めています。

この「畑第一主義」と、徹底した自然との共存の姿勢こそが、彼らのワインが高い評価を得る根拠となっています。

≪ワインスタイル:「軽やかなのに複雑」な純粋な味わい≫

彼らのワインは、現代のトレンドである「薄旨系」と評されることが多いスタイルです。しかし、マセラシオンカルボニック(MC)による、ある種の「嘘みたいにフルーティ」なワインとは一線を画します。

  • 軽さと酸: 軽やかさと美しい酸味を得るために、彼らはブドウの成熟を待ちすぎず、比較的早めに収穫を行います。
  • 複雑味: それでも果実味のバランスは絶妙で、驚くほどアロマティックな白ワインや、軽やかなのに複雑味のある赤ワインを生み出します。
  • 醸造: セラーでの介入は最小限に留め、天然酵母のみを使用し、清澄も濾過も行いません。新樽は使用せず、シンプルな設備で丁寧にワインを仕上げます。

この数年、彼らのワインは非常にクリーンで綺麗な仕上がりが印象的であり、シンプルながらもテロワールの個性を深く感じさせる、現地では常に引っ張りだこの貴重な存在となっています。

インポーター:ラ・グリュー

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