≪異色の転身:精肉職人から自然派ヴィニュロンへ≫
ドメーヌ・レ・ヴァン・ヴレの設立者エリック・デュリフ氏は、オーヴェルニュ地方クレルモン・フェランで30年間、家業の精肉店を営んでいたという異色の経歴を持ちます。
元々ワイン愛好家であったエリック氏は、2000年代初頭からブルゴーニュワインを通じてワインに親しんでいましたが、2013年に地元の自然派ワインビストロ「Le Saint Eutrope」のオーナーとの出会いを機に、自然派ワインの哲学に深く傾倒します。
精肉店でも自然派ワインのセレクションを取り扱うようになり、やがて造り手たちとの交流の中で、自身でワインを造りたいという情熱が芽生えます。彼は、より自然に近い仕事としてワイン造りへの転身を決意し、2020年にドメーヌ・ドゥ・ラルブル・ブランで研修を開始。元レ・グラッピーユのマニュエル・デュヴォー氏といった地元の偉大な造り手たちから、自然なワイン造りを学びました。
そして2022年、オーヴェルニュ地方リヴラドワの西側、エグリスヌーヴ・プレ・ビロムに、自身のドメーヌ「レ・ヴァン・ヴレ(真実のワイン)」を設立しました。
≪哲学:「ブドウの仕事は、肉の仕事と同じ」≫
エリック氏のワイン造りの根底には、長年の精肉職人としての経験が活かされています。精肉店時代、彼は農場まで赴き、家畜の飼育方法や、飼育者の「家畜を大切にする精神」を重視して個体を選んでいました。
この姿勢は、ワイン造りに転向しても全く変わりません。彼は、「ブドウ栽培・醸造も全く変らない」と語り、畑での仕事も家畜を選ぶのと同等に重要だと捉えています。
- 不干渉主義: 可能な限り自然に敬意を払い、ブドウの木が最高のポテンシャルを持てるよう、人的介入を最小限に抑えた栽培・醸造を徹底しています。
- オーヴェルニュのテロワール: 畑は現在有機転換中の2つの主要区画で構成されています。
- ラ・ラクエット (La Raquette):粘土石灰岩土壌の南向き斜面に位置し、樹齢95年のガメイ・ドーヴェルニュが植えられています。
- ベルリン (Berlin):サン・ジョルジュ・シュル・アリエに位置し、西向きの玄武岩土壌が特徴的です。
現在、ガメイ・ドーヴェルニュに加え、ピノ・ノワール、シャルドネの3品種を栽培。今後は友人であるマニュエル・デュヴォー氏から新たな区画を譲り受ける予定もあり、ドメーヌの拡大とさらなる探求が期待されています。
≪醸造とスタイル≫
ドメーヌのワインは、ピュアな果実味とテロワールの個性を最大限に引き出すため、主にアンフォラで熟成されています。
精肉店という異分野から転向したエリック・デュリフ氏が、オーヴェルニュの土壌と伝統品種をどのように表現していくのか、「真実のワイン(Les Vins Vrais)」という名に込めた彼の情熱と挑戦は、今、多くの自然派ワイン愛好家から注目を集めています。
インポーター:bulbul



