≪歴史:美しい村での運命的なスタート≫
ナタリー・バーンズ氏は、2015年にボージョレ地方南部にある「フランスの美しい村」のひとつ、オアン(Oingt)でワイン造りを始めました。この地域は「黄金の石の国(Pays des Pierres dorées)」と呼ばれ、採掘される黄色い石で造られた家々が夕日に美しく映えることで知られています。
農業のバックグラウンドを持たなかったナタリー氏ですが、パートナーであるヴィニュロン(ブドウ栽培家)、ジュリアン・メルル氏との出会いをきっかけにワインの世界へ飛び込みました。当初1.5ヘクタールから始まった畑は、現在3.8ヘクタールまで広がり、彼女の感性を投影したワインが醸されています。
≪栽培:愛馬「ユロ」との二人三脚による馬耕≫
ナタリー氏のワイン造りの最大の特徴は、徹底した馬耕にあります。幼少期から乗馬が趣味だった彼女にとって、畑仕事を馬と共にこなすことは極めて自然な選択でした。
- 微生物への敬意: 土壌の微生物バランスを崩さないよう、重いトラクターは使用せず、愛馬「ユロ(Hulot)」の助けを借りてすべての耕作を行っています。
- 道具の自作: 現代では馬用の農耕具は市販されていないため、古い納屋から見つけ出した道具を修繕したり、自ら製作したりして、地道に畑を守り続けています。
この献身的な農作業が行われる畑は粘土石灰質土壌であり、そこから生まれるブドウには、土地特有の豊かなミネラルが蓄えられています。
≪醸造:伝統を重んじるシンプルかつ純粋な手法≫
馬を使った丁寧な畑仕事から得られた高品質なブドウを、ナタリー氏はボージョレの伝統的な手法で、極めてシンプルに醸造します。
- 製法: 全房でのマセラシオン・カルボニック。
- プロセス: 1日2回のルモンタージュを行い、約10日間後にプレス。発酵終了後は、春までタンクでゆっくりと熟成させます。
- スタイル: 余計な介入を削ぎ落とすことで、オアン村のテロワールをダイレクトに表現した、ピュアで伸びやかな味わいのワインに仕上げています。
≪名前の由来:「感情の運び手」として≫
ドメーヌ名である「トランスポート・エモーショネル」は、フランス語で**“感情の運び手”**を意味します。ナタリー氏は、自身が畑で過ごす時間や馬との絆、オアン村の美しい光景を、ワインという形に変えて飲み手に届けたいと考えています。
彼女のワインを一口含めば、ボージョレの黄金の村を吹き抜ける風や、愛馬ユロの足音、そして彼女の情熱が「感情の波」となって伝わってくるはずです。今後の成長が期待される、ボージョレ期待の造り手の一人です。
インポーター:bulbul



