
≪詳細・歴史≫
ジル・トゥルイエ氏は、フランスワインの銘醸地であるローヌ地方に生まれ、そのキャリアをローヌの有名ドメーヌ、特にM.シャプティエ社でスタートさせました。1990年代にはシャプティエ社のルーションでのプロジェクト「ドメーヌ・ド・ビラ・オー」の立ち上げにも携わり、南仏ルーション地方のテロワールの可能性に深く魅了されます。
2000年代初頭、彼はルーション地方のエスタジェルに拠点を定め、自身のドメーヌを設立しました。ローヌで培った経験とルーションの地の利を融合させ、「テロワールの表現」と「ワインの洗練」を追求する独自の道を歩んでいます。
≪栽培・醸造哲学:自然派ワインの「クラシック」への挑戦≫
ジル・トゥルイエ氏のワイン造りは、現在の自然派ワインの主流とは一線を画す、独自の哲学に基づいています。
1. 畑とテロワールへのこだわり
畑はエスタジェル周辺、標高350〜400mの花崗岩を主とする土壌に位置し、この標高と花崗岩質の土壌が、南仏の強い太陽の下でありながらも、ワインに「フレッシュさ」と「ミネラル感」をもたらします。彼は創業当初から、認証こそ取っていませんが、ビオディナミと有機農法の原則に従い、畑の生命力を高めることを最優先しています。
2. 熟度とエレガンスの両立
彼の造るワインの最大の特徴は、ご提供の情報にもある通り、「薄旨」や「ヴァン・ド・ソワフ(喉の渇きを癒すワイン)」といった軽快さを追求する近年の自然派の潮流とは異なり、ブドウの十分な熟度とエレガンス、そして酸のバランスを高い次元で求め続けている点です。
- 収穫: 酸と軽さを求めて年々収穫を早める生産者が増える中、ジル氏は決して早くはないタイミングでの収穫を選び、凝縮感と完熟した果実味を確保します。
- 熟成: 発酵はコンクリートタンクやステンレスタンクで行われますが、その後の熟成工程では、ほとんどのキュヴェでバリック(小樽)やドゥミ・ミュイ(大樽)が使用されます。この樽使いと樽香、そして整ったストラクチャーから、彼のワインは「クラシックだ」と評する生産者もいます。
これは、ルーションの凝縮感を最大限に引き出しつつ、樽熟成によるマイクロ・オキシジェネーション(微細な酸素供給)を通じて、タンニンを和らげ、ワインに複雑味とフィネスを与えるためです。
ジル・トゥルイエ氏は、自然派ワインの可能性を広げ、次の段階へと進む生産者の一人です。軽やかなスタイルが持て囃される現代において、力強さ、エレガンス、熟成能力を兼ね備えた彼のワインは、自然派ワインにおける「クラシック」とは何かという問いを私たちに投げかけ、飲む者に深い満足感を与えてくれます。
インポーター:ラ・グリュー



