タスマニア・クレイドルコーストの開拓者:ゴーストロック・ワインズの物語
タスマニア島の北部に位置する「クレイドル・コースト」。今でこそ高品質なワイン産地として知られていますが、その礎を築いたのは、ある一組の夫婦の情熱でした。
ゼロから切り拓いた「辺境の斜面」
ゴーストロックの物語は1999年、ケイトとコリン・アーノルド夫妻がノースダウンの荒れた斜面を購入したことから始まります。当時、この地でブドウ栽培が成功すると信じる者はほとんどいませんでした。
農業への深い愛情だけを武器に、彼らは重機に頼らず、自分たちの手で畑を耕し、一本ずつ苗木を植えていきました。「自分たちが正しいと信じる道」を歩み続けた20年。その結果、何もない斜面は、タスマニアを代表する27ヘクタールの美しいエステートへと変貌を遂げたのです。
恵みの土壌「ローム・オン・クレイ」
彼らがこの地を諦めなかった最大の理由は、その特異な土壌にあります。 ノースダウンの畑は、肥沃なローム層の下に粘土質(クレイ)が広がる理想的な構成。この土壌が、過酷な沿岸部の気候からブドウを守り、ワインに圧倒的な深みと凝縮感を与えています。
次世代が吹き込む「洗練」と「芸術」
現在は、第2世代であるジャスティン・アーノルドと、妻のアリシア・パードンがその意志を引き継いでいます。ヤラ・ヴァレーやナパ・ヴァレーなど、世界各地で経験を積んだジャスティンの技術により、ワインはさらなる洗練を纏いました。
2015年には芸術的な自社ワイナリーが完成。彼らは伝統を重んじつつも、「スーパーナチュラル(Supernatural)」シリーズのような、野生酵母や無濾過にこだわった革新的なナチュラルワイン造りにも挑戦しています。
誇り高き「7つの単一畑」
ゴーストロックが現在展開している「シングル・ヴィンヤード(単一畑)」シリーズは、彼らが手塩にかけて育てた7つの区画から生まれます。
- ピノ・ノワール: 14種類ものクローンを使い分け、土地の表情を多角的に表現。
- シャルドネ&リースリング: 冷涼な気候を活かした、クリスタルのような透明感。
「もし素晴らしいものが簡単にできるなら、それはどこにでもあることでしょう」 その言葉通り、ゴーストロックのワイン一杯には、タスマニアの厳しい自然と、それを克服してきた家族の歴史が凝縮されています。

インポーター:コロニアルトレード


