≪異色の経歴:ジャーナリストからヴィニュロンへ≫
カトリーヌ・ベルナール氏の経歴は、ワイン生産者としては非常に異色です。彼女は、フランスの主要な全国紙である「リベラシオン(Libération)」などで約20年間活動していた元ジャーナリストであり、そのキャリアの後半はモンペリエの特派員としてラングドック地方に根を下ろしていました。
40歳を迎え、2児の母でもあった彼女は、都会の喧騒とマスメディアの仕事から離れ、「自然への回帰」という強い熱望から、ワイン造りという新たな人生を決意。2005年(ご提示情報からは16年前の2008年頃)にモンペリエの北部に最初の畑(約3ヘクタール)を購入し、ワイン生産者としての道を歩み始めました。
≪哲学:「亜硫酸を使わない」昔ながらの醸造≫
カトリーヌ氏は、ワイン造りを始めた当初から、化学的な介入を嫌い、テロワールを尊重する姿勢を貫いています。
- 有機栽培の徹底: 2007年には有機栽培の認証を取得し、除草剤や化学肥料は一切使用していません。最近では、ワインの品質向上だけでなく、気候変動への対策として、ブドウ畑の再生(樹木やハーブの植樹)など、ビオディナミ的なアプローチや環境改善の研究にも熱心に取り組んでいます。
- カーヴでのこだわり: 醸造は「良く熟したブドウを野生酵母で発酵する昔ながらの醸造方法」を実践しています。彼女は当初、亜硫酸(SO2)は欠かせないと指導するコンサルタントと意見が対立し、契約を取り消したほどの徹底ぶりで、亜硫酸を極力使わない(あるいは無添加の)醸造に挑んでいます。
- 容器へのこだわり: 醸造槽には、彼女が「冷たすぎる」として好まないステンレスタンクではなく、ファイバー(Fibre)製の丸いタンクを使用することを好みます。これは、ワインを温かく、角のない容器で育みたいという、彼女の感性を反映しています。
≪ワインのスタイルと展望≫
カトリーヌ氏のワインは、ラングドックの強い日差しとテロワールがもたらす力強さを持ちながらも、その一方で「女性らしい果実味豊かでエレガント」「しなやかでなめらかな」スタイルが特徴です。彼女自身の聡明で活発な人柄が、ワインの「フレッシュさ、フィネス、消化の良さ」として表現されています。
彼女のキュヴェ(La Carbonelle, Le Carignanなど)は、専門メディアや試飲会で高い評価を得ています。また、元ジャーナリスト・作家としての一面も持ち、ワインに関する記事を執筆したり、自身の転身を綴った著書を出版するなど、多方面で話題を提供し続けている、ラングドックの個性的で魅力的な生産者です。
インポーター:ピコルーズ


